Hokkaido Highway Blues

あらすじ

九州の高校で英語教師をするカナダ人の私は、本州最南端の佐多岬に立っていた。休暇をとり、佐多岬から北海道の北端まで、桜前線を追ってヒッチハイクの旅に出たのだった。なぜヒッチハイクかって?日本人と「一緒に」旅をしたかったからだ。九州から四国に進み、城の桜が満開の姫路を経由して、福井、金沢、新潟、弘前、青森と順調に北上する。

しかし弘前城で花見の宴会をしているグループに加わり、桜の花びらの浮いた盃の酒を飲んで気づいた。私がしていることは根本的に間違いだった。桜は、つかの間の、はかないものである。桜前線を追いかけたことは、時間や季節や死すべき運命でさえも否定した行為である、と。

登場人物紹介

私

九州の高校で英語教師をするカナダ人。日本の端から端までヒッチハイクする史上初の人になると宣言し、これを実行した。花見をし、俳句を詠み、八十八箇所霊場巡礼や禅寺などの知識ももつ。

右田さん
右田さん

佐多岬まで私を乗せ、その後鹿屋市郊外の自宅に招いて、子どもたちと一緒の賑やかな夕食と一晩の宿を提供してくれた。私たちふたりは、地図を広げ、ヒッチハイクのコースについて話し合った。

高杉教授
高杉教授

猿の研究をする東大教授。宮崎県日南市の鵜戸神宮で私は彼ら夫婦と知り合い、野生の猿のいる離島に同行した。メス猿が若い猿にエサについた砂を洗い落としてから食べることを教えていたのが、何年か前に世界的なニュースになった島だ。

中村ショウイチ
中村ショウイチ

三時間、雨の中、福井市民の車は一台も止まってくれない。そんな怒り心頭の私を拾い、約束があったにも関わらず、わざわざ金沢まで送り届けてくれた。福井市民への怒りを彼にぶつけたが、冷静になると筋違いであったことに気づいた私は、ガソリン代などを渡そうとしたが、彼は受け取らなかった。

斎藤シゲト
斎藤シゲト

函館の「ナイスデーイン」という朝食付きの宿のオーナーー。英語を話すのでいろいろ会話をした。翌朝、青森フェリーが到着する函館フェリー港に送り、「アメリカから来たウィリーです。私は日本語を少し話せます」など長々と書いたボードをもつように進められた。そのおかげで全く誰にも拾われず、苦労することとなった。

この本の楽しみ方・魅力

Hokkaido Highway Blues の魅力をたくさん知り尽くした共同翻訳者のみなさんに、
この本の楽しみ方を教えてもらいました!

  • 海外旅行に行くと現地の文化や風物がとても珍しいのはよくあることだが、日本に来た外国人にとって日本がどのように見えるかに思いを馳せることはあまりないのではないだろうか? また、日本に住んでいても居住地から遠い地域のことはよく知らないことも多いし、日本文化についてどれだけ語ることができるだろうか?この本は外国人の目を通して見た日本の観光ガイドであり、外からのまなざしを理解することで日本人として自らの社会・文化を振り返る契機となる一冊だ。

    MK

  • 九州最南端の佐多岬から北海道最北端の宗谷岬そして利尻島まで、作者の移動距離は相当なもの。日本地図を広げて旅路をたどりながら読み進めるのがお勧めだ。各地の歴史的背景が詳細に記され、作者の視点から見た日本とそこに暮らす人たちの姿がありのままに描写されている。登場するのは偶然出会ったごく普通の人たち。一緒に過ごすのは、ほんの数時間から一、二日だけ。しかし作者との出会いはそれぞれの物語を紡ぎ出し、出会った人が歩んできた道を想像させる。大げさな表現や比喩が多く最初は戸惑うが、これは読者を引き付ける作者独特の工夫だろうか。弘法大師にまつわる四国と小豆島の巡礼の道、仏教と神道、寺と神社、お城、はたまたラブホテルにいたるまで、桜の花を愛でることからの展開が面白い。

    長坂 寛子

  • まずは、日本中を旅することができます。日々忙しくしていて旅行に行きたくてもなかなか行けない人、またたとえコロナ禍のような、旅行好きの人が自由に旅することができない時世であったとしても、この本で、主人公とともに日本縦断の旅が楽しめます。自由に旅行ができるようになったとき、旅行計画のヒントが得られるかもしれません。また、主人公が道中さまざまな日本人に出会います。そして、当たり前な彼らの行動や言動が、外国人である主人公にどう映るのか、ギャップを感じることができます。

    K.M.

  • ヒッチハイクで桜前線を追って、九州から北海道まで旅をしながらその土地土地の地理、歴史と文化に触れているので、日本地図を見ながら読み進めると自分が旅をしている気分になります。コロナでなかなか旅行ができないような時にも、読んでほしい1冊です。

    西 かおり

  • ヒッチハイクの旅は見ず知らずの人への無条件の信頼から生まれる密室での期間限定の人間関係です。「旅は道連れ」といいますが、ヒッチハイクは旅の本質かもしれません。日本在住の独身カナダ人男性が、日本の「最南端」の佐多岬から「最北端」の宗谷岬までヒッチハイクで桜前線を追う抱腹絶倒の珍道中。親指一本突き立てるだけで、どんな心優しい日本人が車に乗せてくれて、ハイウェイ沿いに彼はどんな日本を垣間見ることになるでしょう。日本人の私たちも見落としていたこと、いや目を背けていたことを、ユーモアを込めて、時には辛辣に気づかせてくれます。あなたの故郷は彼の目にどう映ったでしょうか。そして、読後あなたの中の日本はどう見えるでしょうか。

    大森 裕子

ブックレビュー

"水俣で英語教師として勤務していた作者は、九州の最南端から桜前線を追いかけて北海道の最北端まで日本を縦断するという途方もないことを思い付く。それもヒッチハイクで。そんな酔狂なことを思い付く作者も相当なものだが、彼を乗せてくれる人々も負けず劣らず個性豊か。

行く先々で彼が遭遇する日本の風物は、観光スポットにとどまらず、ラブホテルやセックスミュージアムなどの下世話なものから果ては能や戦争捕虜に至るまで、日本の光と影をあまねく、そして容赦なく描き出す。各地の美しい桜とともに繰り広げられる笑いあり涙ありの珍道中をお楽しみあれ。"

MK さん

"桜に魅せられたカナダ人が桜の花を追って、ヒッチハイクで日本を縦断する。この無謀とも思える試みは、真の日本を探し求める作者の行動力と、出会った人たちの善意がつながったことで成し遂げられる。 兼六園の花見で知り合った人の家を訪れ、サイパンで戦争捕虜だった父親と交流する場面は圧巻だ。「一期一会」の縁が、この作品のテーマのひとつかもしれない。

訪問地の風景や車に乗せてくれた人との絡み合いが、ユーモアと皮肉を織り交ぜながら丁寧に書き込まれている。それは独断と偏見?反論したくなる部分もあることはあるが……。

作品の根底にあるのは作者の日本を愛する心、そして日本をもっと深く知りたいという強い気持ちのように思える。歴史、地理、宗教、伝説など、よほど詳しく調べたうえで旅行記にまとめたのだろう。私たちが日本を見つめ直すきっかけを与えてくれる、読み応えのある作品だ。"

長坂 寛子 さん

"主人公のウィルは、来日したばかりで熊本県の天草諸島で英語教師をしていました。ひょんなことから、桜前線を追いかけながら日本縦断旅行をすることになります。しかもヒッチハイクで。多くの場所を訪れている道中、彼はたくさんの日本人と出会います。外国人である主人公の目に、日本人にとってごく普通の行動や言動はどう映るのか。そのギャップを感じることができ楽しめると思います。

また、本書で主人公と一緒に日本を旅することができます。今度の旅行はどこに行こうかな… 旅行のハンドブックにもなる一冊ではないでしょうか。"

K.M. さん

"主人公は熊本で英語教師をするカナダ人。ある日、桜前線とともに北海道までヒッチハイクで日本横断の旅に出る。

ヒッチハイクをしながら、日本の文化に触れながらたくさんの人と出会い外国人から見た日本が描かれている。途中有給休暇が残り少なくなってしまう。果たして最北端で無事にゴールできるのか……。"

西 かおり さん

"日本人ほど、外からどう見られているか気になる国民はいないと言われています。ウィル・ファーガソン氏がヒッチハイクで出会った様々な人たちのエキセントリックな態度は、きっと私たちも見覚えがあることでしょう。

時にはとても恥ずかしくて、これが著書によって世界に拡散されることになると思うと多少残念な気持ちにもなりますが、それよりも幾多の登場人物への彼の視線の暖かさと鋭さが勝って、どんどんこの本を紹介したくなりました。

日本人でも滅多に体験しないヒッチハイク、さらに桜前線を追うことにこだわった日本縦断ファーガソン版『新日本紀行』の初版は一九九八年で、この訳本が完成した時点では二〇年以上も昔に書かれたものですが、その間日本の都市の風景は激変しても、遠隔地方の風景や日本人の本質はさほど変わっていないでしょう。彼が遂行したヒッチハイクは心優しい日本人の連鎖のおかげなのです。"

大森 裕子 さん

著者紹介

Will Ferguson

日本の文化や歴史に造詣が深いカナダ人作家。2021年にScotiabank Giller賞を受賞。デビュー作品 “Happiness” は23ヶ国語に翻訳され、Leacock MedalやLibris賞など複数賞を受賞、ノミネートされている。”Hokkaido Highway Blues” は、1998年に出版された作品で、”Hitching Rides with Buddha” というタイトルでも販売されている。

翻訳者について

Hokkaido Highway Blues日本語訳版は、フルーツフルイングリッシュ「翻訳本出版プロジェクト」に参加された23名の共同翻訳となっています。

原書を何度も読んで理解するところからスタートし、たくさんのステップを経て生み出された、皆さまの努力が詰まった一冊です。

翻訳者について
  • annya
  • 石川 美奈
  • 大森 裕子
  • 小川 茂樹
  • 蔭山 麻由子
  • 賀前 知可許
  • 小池 タカエ
  • 笹島 ひさみ
  • 佐藤 久美子
  • 澤浦 文章
  • 関 信介
  • 瀧谷 美香
  • 富田 憂美
  • 冨田 陽子
  • 長坂 寛子
  • 長山 昌子
  • 西 かおり
  • 橋本 浩子
  • 初瀬川 麻美
  • 星 夏子
  • 松浦 清美
  • 山本 輝人
  • 横山 かよ

※五十音順

Hokkaido Highway Blues(日本語版)

書籍情報

タイトル
Hokkaido Highway Blues(日本語版)
邦題
北海道ヒッチハイクブルース 桜追いかけ珍道中
著者
Will Ferguson
ジャンル
旅行記
出版年月日
2021年12月1日
ページ数
484ページ
サイズ
菊判(150mm x 220mm)
ISBN
978-4-9912118-2-9 C0097
価格
1,980円<税込>
※1冊〜購入いただけます。
※商品の発送は2/9(水)以降となります。