英日翻訳家デビュー講座 Children’s Book Series 4 「A Fable」by Mark Twain

あらすじ

とある芸術家がすばらしい絵を描き、それを鑑賞し賞賛。それを見ていたその芸術家の飼い猫は森の動物たちに向かって、その絵について自慢します。

そこで興味津々の動物たちが変わるがわる絵を見に行きますが、動物たちの意見はそれぞれ全く異なってしまいます。さあ、それはどうしてでしょう......?

この本の楽しみ方・魅力

“A Fable”を翻訳した訳者それぞれより、この本の楽しみ方と魅力をご紹介!

  • マークトゥエインらしい機知にとんだおはなし。もとは、大人向けに発表された作品のようですが、元来こどもを愛するマークトゥエインが、子どもにもわかるように(もしかしたら、私のような頭の堅い大人にも理解しやすいように)物語形式を使って、人間の本質、矛盾、おかしみを的確に表現しています。

    翻訳にあたっては、本講座が子ども向けであることを考慮した言葉選びに苦慮しました。このおはなしを紙芝居にして子どもたちに読んで見せたら、どんな反応をしめすかワクワクします。

    二瓶 京子

  • このお話に出てくる動物たちのキャラクターの特徴は、言葉遣いの違いに現れています。また、ドキドキ、ワクワクする感じと、その一方で目的が達成できないので落ち込む気持ちが怒りに変る過程を、単調な表現の繰り返しにすることで表現してみました。

    そして、クライマックスでは、猫の“MORAL”が、このストーリーの肝になるよう考えました。ドラマティックな展開を楽しんでいただきたいです。

    夕見 七菜

  • 世界的な作家マーク・トゥエインの魅力がぎゅっと詰まった子供向けの短編ですが、大人が読んでも心に響くことがたくさんあります。短いけれど、ユーモアがたっぷりあるこの物語は、「これはどうしてなんだろうね?」と親子で話し合いながら一緒に読むのもおすすめです。

    K.Y.

  • 小さい読者の皆さんには難しすぎないだろうか?

    この物語を原書で読んだ最初の感想です。大人が読んでも様々な解釈が成立し得るこの物語における作者の意図を、小さい読者の皆さんに理解してもらうにはどうしたらいいのか、直訳したのではおそらく作者の意図は伝わらない、まさに翻訳者としてのセンスを問われていると感じました。

    作者のマーク・トウェインの意図は最後の数行に凝縮されていますが、この人生の教訓に至るまでの過程をテンポよく平易な言葉で表現することに苦心しました。ネコや森の動物たちの、微笑ましくも人の心の盲点を鋭く突いた対話を、物語の動物たちのようにドキドキワクワクしながらお楽しみください。

    Rosaly

ブックレビュー

このおはなしの意図をどう解釈するかは、あなた次第。読者の数だけ、マークトゥエインの『寓話』がある。

二瓶 京子 さん
この本は、子どもから大人まで、素直に「世界」を知るということの面白さと奥深さを感じることができる作品です。「世界」を知ることは、意外と難しいことが、「美しい小さな1枚の絵」を巡って展開されています。とんでもなく小さく、美しいから価値があるように思えますが、むしろ日常生活の中にある、ちょっとしたことを見る目こそが大事だと教えられているように思います。それがあれば、いつでも「世界」はなんとも美しく、素晴らしくあるということを、私たちは発見できるのではないでしょうか。そんなことを考えさせられる作品です。落ち込んだとき、頭が固まっているなと思う時、ぜひこの著作を手に取って読んでから、自分の周囲の世界を見直してみましょう。きっと見落としていた小さな「世界」が、この本の読者になったあなたなら、見えると思いますよ。
夕見 七菜 さん
動物たちのやりとりが微笑ましく、子供が夢中になれる物語。一方で、簡単な文章とストーリーの中に、深い意味や哲学が込められていて、大人が読んでも色々と考えさせられます。読んだ人によって、さまざまな物語の受け止め方ができる不思議で魅力的な作品です。
K.Y. さん
物語は、絵描きに飼われているネコと森の動物たちとの対話、そしてネコが去った後の動物間の話し合いで進行していきます。絵や鏡の魅力を滔々と語るネコ、ネコの話を感心しながらも半信半疑で聞いている森の動物たち。ネコの話に疑いを持ち自分たちで真実を確かめようと行動する森の動物たち。彼らのやり取りを通して徐々に物語の核心に迫っていきます。寓話とは、比喩を用いて人生の教訓を説くたとえ話です。子供たちにもわかりやすいように、動物たちに人生の戒めを説かせたマーク・トウェインの手法は見事です。動物たちのやり取りのリズム感を損なうことなく、わかりやすい表現でマーク・トウェイン・ワールドを展開できたなら、翻訳者として本望です。
Rosaly さん

著者紹介

Mark Twainマーク・トウェイン

19世紀中盤から20世紀はじめにかけて活躍したアメリカの作家。

『トム・ソーヤーの冒険』、『ハックルベリー・フィンの冒険』、『王子と乞食』など、フィクション、歴史小説、児童文学、ノンフィクション、紀行文学、エッセイなど多方面における作品を多数発表し、世界中で講演活動も行うほど人気のある著名人であった。

ユーモアと社会風刺に富んだ作品で知られるが、この “A Fable”にも社会風刺のメッセージが込められており、童話とはいえ大人が読んでも楽しめる作品。

翻訳者について

“A Fable”日本語訳版は、フルーツフルイングリッシュ「英日翻訳家デビュー講座 Children’s Book Series 4」に参加された5名それぞれによる翻訳集です。

半年間かけて原作と向き合い翻訳に取り組んだ結果、同じ原作から、訳者によってさまざまな日本語のストーリーが生み出されました。その違いもお楽しみいただける渾身の1冊です。

  • 二瓶 京子
  • 村田 洋子
  • 山下 啓子
  • 夕見 七菜
  • 横山 かよ

※五十音順

書籍情報

タイトル
A Fable(日本語 電子版)
著者
Mark Twain
ジャンル
童話
出版年月日
2025 / 02 / 14
ページ数
41ページ
ISBN
978-4-9912684-4-1 C0097
価格
定価990円<税込>