読者の皆様、こんにちは!インストラクターのK. Yukaです。
今回お話しするのは、翻訳で必要とされるスキルのひとつ、
ストラテジースキルについてです。
翻訳に必要な5つのスキル
文芸翻訳であるか実務翻訳であるかを問わず、翻訳の世界では、
大きく分けて5つのスキルが必要とされます。
- 原文分析スキル
- リサーチスキル
- ストラテジースキル
- 翻訳スキル
- 校正スキル
翻訳の一般的イメージでは、原文分析スキルと
翻訳スキルが特に重視されていますね。
しかし、この5つの中では影が薄いこともあるストラテジースキルも、
翻訳のお仕事では欠かせない一要素なのです。
しかし、「ストラテジー」とはそもそも何を指すのでしょうか?
翻訳者に欠かせない、ストラテジースキル
翻訳の世界では、ストラテジーとはつまり、
「誰に向けた文書であるか」を判断し、それに合うような
文体を探っていく段階であるとされています。
例えば、同じ観光業界の文書でも、
ラグジュアリー層向けの施設とファミリー層向けの施設とでは、
施設紹介文の雰囲気にも違いがありますよね。
また、技術系翻訳なら、あるスマートフォンアプリについて、
開発者向けの文書なのか、一般ユーザー用の文書なのかで、
訳し方も大きく異なってきます。
※ケースバイケースですが、開発者向けの文書の場合、
多少直訳的でも良いので、とにかく誤訳や行き過ぎた意訳をせず、
専門用語を正しく訳すことが求められます。
ストラテジースキルが翻訳のスタイルを左右する
もっと単純な例を挙げるなら、対象読者や文書の役割次第で、
文体(「~です・ます」か「~だ・である」か)も変わります。
この見極めは非常に重要です。
なぜなら、敬体と常体を取り違えるだけで、
訳した文章すべてが誤訳になる可能性もあるためです。
また、単語の訳し方も変わってくることがあります。
例えば、”dog lover”という言葉も、文章のスタイルによっては、
単純な直訳である「犬愛好家」ではなく、「犬が好きな人」「犬派の人」
のほうが収まりが良いかもしれません。
このように、誰宛ての文書かを正しく知り、適切な文章スタイルを探すこと、
これがストラテジーです。
そしてストラテジースキルとは、そのために必要な能力なのです。
ストラテジースキルを上げて、翻訳者としてのステップアップ
では、ストラテジースキルを上げるにはどうしたら良いでしょうか。
3つのコツをご紹介します。
①原文分析
ストラテジースキルを上げるための第一のコツは、
原文分析スキルを上げることです。
原文を正確に読み取るスキルが身についていれば、
誰のためのどんな目的の文書かが自然に分かります。
そのため、英日翻訳ならいろいろな英語文書を読み、
読解力をつけておきましょう。
②スタイルガイドの読み込み
もうひとつは、スタイルガイドや用語集をしっかりと読み込むことです。
実務翻訳であれば、訳文のスタイルを指示するスタイルガイドや、
専門用語の訳し方を記した用語集が事前に配られることがあります。
こうした資料からも、対象読者や適切なスタイルのヒントを
得ることができるでしょう。
スタイルガイドと用語集に合わない翻訳はそれだけで失格となることもあるので、
品質保証の面からもこの2つには目を通しておくべきですね。
③原文の対象者読者を把握
また、翻訳エージェントから翻訳のお仕事を受注している時に
原文の対象読者が不明な場合には、
エージェントに問い合わせるという手もあります。
こういう形でお仕事を受注する場合、分からないことはどんどん聞いて、
納品時まで後回しにしないことが大事です。
特に訳文の文体は翻訳のクオリティ全体を左右するものなので、
誤訳を避けるためにも積極的な質問が欠かせません。
さらなる翻訳技術の向上を
以上、ストラテジースキルについての説明でした。
読者の皆様の翻訳技術向上にお役に立てれば幸いです。
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座右の銘は「Push myself ever onwards to try new things, and to not be afraid to step outside my comfort zone.」
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