8歳の息子が理解できない日本語表現
みなさん、こんにちは。イタリア在住のロベルトです。
突然ですがこの文章を訳してみてください。
「では、これから説明に入ろうと思います」
実はこの上の文章には、私の8歳になる息子が、日本人Youtuberの動画を見ていて理解できないと思った表現が含まれています。
息子の疑問は、「どうして『思います』っていつも言うの?」というもの。
「これから組み立ててみたいと思います」
「できたかどうか見てみたいと思います」
「どうだったか聞いてみたいと思います」
息子は「これから組み立てますって言えばいいのに、なんで『思います』って言う必要があるの?やろうかどうか迷っているから?」と聞いてきました。
「思います」はただの表現ですが、確かにそういう風に受け止められますね。
最初の「では、これから説明に入ろうと思います」も迷っているわけではないので、訳す際は日本語の「と思います」を完全に無視して、Let’s move on to the explanation.でいいでしょう。
外国人がとまどう高度な断りのテクニック!
日本では、断りたい時、Noと言いたい時に、「ちょっと厳しいかな...」という表現をしますね。
その「ちょっと」の役割は何か?そして、「かな」とは?外国人が疑問に思うところです。
例えるなら...京都の人に「良い時計してますなぁ」と言われて、その意味が「話が長いよ」という意味なのと同じような印象かな?
表現がインダイレクトで、外国人には分かりにくいです。(京都の時計やお茶漬けの話は本当ですか?)
日本語の文法として、こうした言い方をする必要はないですが、日本語ネイティブはこのような言い回しを好んでしますよね。
日本語にも当然「はい」「いいえ」という言葉がありますから、「今日飲みに行こうよ」という誘いに、「いや、今日は行かない」と答えてもいいはず。
しかし、多くの日本人は、まず「いいえ」という否定の表現を飛ばし、さらに「今日はちょっと」という文法的に意味不明な答え方をすることで、「行きたくない」気持ちを優しく包んで相手に示すという高度なテクニックを使います。
ですので、英語でも、Are you coming tonight? という誘いに対して「今日はちょっと」の気持ちを出したければ、Not today, sorry. と言うことができます。
同じように、「そろそろ帰ろうかな」の“かな”も、ストレートに「帰る/帰りたい」と言ってしまっては相手が不愉快に思ったり、失礼だと感じたりするだろうから、“かな”を入れることで、「帰りたいという気持ちがありますが、とても帰りたいというわけじゃない」という雰囲気を出す技術ですよね。
最初に出てきた「と思います」の役割も丁寧さ。
「私はこうしようと考えていますが大丈夫ですか?」というニュアンスでしょう。
この「日本人的な表現や言い回し」ができない限り、日本語が上手になれないし、翻訳もうまくできません。
翻訳をする時には、その隠れた意味やニュアンスをしっかり表した方がいい時もあれば、無視した方がいい場合もあります。
これは翻訳者にとって大きなチャレンジになりますが、楽しいものでもあります。
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イタリア在住。3言語の通訳・翻訳家。最近は特に、十数年住んだ日本が懐かしくてたまりません。
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同じ質問をイギリス人の友人にされました(笑)当の日本人もよくわからずに使っていますが、「念のため聞き手に確認を取るための作業」だと答えました。ロベルトさんと同じような意見で安心しました。
京都で学生時代を過ごしましたが、京都のお茶漬けや時計それからピアノも、昔はあるあるでした。でも今の若い人は言わないかもしれません。