「雪」とは何か
みなさん、こんにちは。イタリア在住のロベルトです。
ある本の中で、こんなエピソードを読んだことがあります。
ずっと昔、赤道直下の国に移り住んだヨーロッパ人が、片言の英語を話す現地の人に自分の生まれ故郷について話している時、「雪」がどんなものかを説明するのに困ったそうです。
相手は snow という単語を知らなかったので、「冷たい」「空から降る」「熱いと無くなる」などと一生懸命説明してみたけれど、相手には伝わらず。
でも最後に母国の絵ハガキがあることを思い出して見せたら、「それならキリマンジャロにある」と言われたというオチ。
その現地の人にとって「雪は山の上にあるもの」ですから、「空から降ってくる」と説明してもなかなか伝わりませんね。
自分にとって当たり前のことを、そうではない人に話すのってすごく難しいものです。
存在しないものを言葉にする
翻訳者であれば、誰でも定期的にぶつかってしまう問題。それは「片方の言語に存在しない言葉を訳す」です。
これはかなりの悩み!訳すのに悩みに悩んで数日間かかって、最後の最後の見直しの時に「やっぱりこれじゃダメ!」と思ってまた考え直したり...。
大変ですが、これは翻訳という仕事の魅力でもありますね。ぴったりの表現を見つけた時の喜びは大きいです。
さて、なぜそんな言葉があるかというと答えは簡単です。
それは「文化が違う」から。
文化によって言語が形成されますから、ある国では端的に言葉で表せるコンセプトを、そのコンセプトを持たない国に伝えなくてはならない場合...優秀な翻訳者の出番になります!
日本の「心」は難しい
こういう面で、日本語はかなり難しい言語です。例えば「心」というコンセプト。英語にするなら何と訳しますか?
答えは一つだけではないです。日本人にとっては、「心」と言ったらパッと分かりますよね。でも英語ではちょっと違います。
基本的に「心」と言ったらheart ですが、これだけじゃ大雑把すぎますし、場合によって間違っているとも言えます。なぜならば、heart と言うと「心臓」の意味もありますから。
そして、日本語の「心」の使う場面はとても豊かで独特です。たとえば、あなただったら「心細い」を英語でなんと訳しますか?
「feel lonely」はどうだろう?良いとは思いますが、物足りないですかね。「心細い」には「不安」の意味もありますので、「独りぼっち」という言葉だと不十分かもしれません。もしかしたら「incertitude」の方が良いかも。
こうしてどんどん適切な訳に近づいていきます。当然contextによって一番適切な言葉が何かは変わりますが、訳し方はこうですね。場合によってとても難しいものです。
じゃ、もう一つ。「心がけ」は何と訳す?
場合によって訳が異なりますが、「be conscious of」、「try to」、「be careful」、「be committed」など言えると思います。
しかし、「心がけ」の「心」って何でしょうか?heart?私なら mind と訳しますが、皆さんならどんな風に訳す?
難しいことの答えが必ず一つではないのが、翻訳の難しいところです!
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イタリア在住。3言語の通訳・翻訳家。最近は特に、十数年住んだ日本が懐かしくてたまりません。
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