スペルチェッカー登場前の翻訳
こんにちは、英日翻訳家デビュー講座の講師をしておりますMasakoです。
お恥ずかしい話ですが、今回は私がこれまでに経験したスペルチェック機能や翻訳支援ツールの失敗についてお話ししようと思います。
その昔、私は某Community Collegeで英語のbasic classを受けていました。
まだスペルチェックなどというものがなかった時代、手持ちのワープロで辞書を引き引き書いた初めての英文エッセイ。
それはそれはユニーク極まりない新語が続々と登場するクリエイティブなものだったのでしょう。
なんと”Creative speller”などというありがた~~い呼称をいただいてしまいました。
その後、やっとスペルチェッカーなるものが登場し、やや遅れてコンピューターのワープロでも日本語が使えるようになりました。
とはいえ、スペルチェッカーはその名のとおり、スペルをチェックするだけですから、コンテキストなどおかまいなし。
スペルは正しくても、前後の文やフレーズに当てはまらない単語が多数あるのですよね。
スペルチェックも欺く?!要注意英単語
スペルチェックにひっかからないが、場所をわきまえない困った単語たち
- WeatherとWhether
- MassageとMessage
- WitchとWhich
- MailとMale (これは本当によく間違えました)
- CourseとCause
等々、これらは英文を書くときに注意しなければならない単語たちです。
現在は、大きな案件など複数の翻訳家が翻訳支援ツールを使って用語の統一を図ります。
翻訳支援ツールとしては、Trados, Memsource, MemoQなどがよく使われているツールですね。
いずれも原文とターゲット文のメモリを対比させ、用語単位または文単位で統計的な処理によりなん%同じであるか算出して訳文を抽出・決定していきますが、
困ったことに誰かが誤った単語をメモリに登録したうえに、100%マッチだと承諾してしまうと、そのプロジェクトを通じて同じ誤った単語が繰り返し使用されてしまいます。
例えば、「メッセージを送りました」という文 ”I have sent a message”
この ”message” が誤って ”massage” と入力されたままメモリに登録されてしまい、100%マッチをクリックされると。
翻訳支援ツールの機能であるQA(quality assurance)チェックですら見過ごしてしまうのです。
これはたった26文字の英文の話です。
和訳の日本語チェックはさらに難度高し!
日本文はもっとたいへん!
ご存知のとおり、日本語には漢字、カタカナ、ひらがなと3種の文字があり、漢字など音読み、訓読みがあるうえに、同じ読みなのにまったく意味が異なるものが多数あります。
縦書き、横書きどちらでも良いという柔軟さも、いざ文を書くうえでは大きなハンディとなってしまいます。
英文の数字や斜体の扱いをどうするかについて頭を抱えてしまうことも、英日翻訳家デビュー講座を受講する翻訳家のたまごさんたちは、すでにご経験済みでしょう。
私の場合、ふだん医学用語を使う頻度が高いので、我がPCのWordが学習した単語の上位に出てくるのが医学用語です。
例えば、「意訳」と入力したいのに「医薬」と入力されてしまう。
「支給」や「至急」と入力したいのに、「子宮」と入力されてしまう。
「銀杏」と入力したいのに「胃腸」が出る。
「常駐」が「静注」に。
「駐車」が「注射」。
「航空」が「口腔」。
「両方」が「療法」。
「意思」が「医師」にというように、数え上げればきりがありません。
「眼下に広がる景色」が「癌化に広がる景色」と入力されてしまった時には、さすがに唖然としてしまいました。
頼りになる機能があるも100%信頼するなかれ!
スペルチェックも翻訳支援ツールも、要注意ですね。
それでも、日本文でも必ず最後にスペルチェックをかけてみましょう。漢字の誤用は表示されませんが、便利なのは「表記ゆれチェック」です。
Wordをお使いであれば、「校閲」タブの「言語」枠内の「表記ゆれチェック」をクリックすると、例えば同じ文書内で、「コンピュータ」と「コンピューター」が混在している場合、このふたつが表示されます。
修正候補からいずれかひとつを選んで「変更」をクリックすると、どちらかに統一されます。
漢字の送りがなも統一されますよ。
ただし、送り仮名については、名詞と動詞で違いがあったりしますので、これも要注意ですね。(例:組合せ(名詞であればOK)、組み合せる(動詞))。
スペルチェッカーや翻訳支援ツールを100%信頼するなかれ!
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商社勤務。英国へ語学留学しCambridge English Certificateを取得。帰国後外資系企業に勤務。その後結婚して夫の転勤先である米国カリフォルニア州、テキサス州、さらにアフリカのナミビアを転々とする。
それぞれの地域のカレッジにて英語、スペイン語、数学、歴史など一般教養を終了し、ナミビアでは、南アフリカ大学の通信教育にてPsychologyを専攻。
1998年に帰国し、2000年にフリーランス「医学翻訳家」として稼働開始。医学分野において創薬(製剤試験、動物試験)、治験関連文書、承認申請資料、照会事項、文献、製薬品質管理、副作用報告書等々、様々な文書の英日、日英翻訳を手掛けて今日に至る。
<趣味や日課>
昔から単純なパズルゲームが好きで、現在は3マッチパズルにはまってます。他には読書。Amazon Primeでドラマや映画を鑑賞(CMがなく、好きな時間に連続して見ることができるので、国内、海外、ジャンルを問わず興味がわいたものを観ますが、近ごろはやりの『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』など常時アドレナリンだらだら系は苦手)、音楽鑑賞。
スポーツ観戦は、相撲に加え、テニスはウィンブルドンのみ、サッカーは四年に一度のワールドカップのみ観戦。フィギュアスケートも観ます。スポーツジムでエアロやヨガのレッスンを受け、マシンに乗ったりしていたのですが、どちらかというとその後の入浴が楽しみ。現在はウォーキングに切り替えています。料理は時短で済ませますが、どういうわけか編み物が好きです。
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