皆さん、こんにちは!
英日翻訳家デビュー講座を担当しておりますMasakoです。
今回は、前回ご紹介した、多和田葉子著書『白鶴亮翅』の続きのお話をしていきますね。
※前回の記事「【翻訳家の暮らし】『白鶴亮翅(はっかくりょうし)』に思うことー漢字の不思議〈前編〉」を見逃した方はまずこちらからどうぞ!
小説『白鶴亮翅』では、独りドイツに住む翻訳家の主人公が太極拳を習いに行くというところから始まりましたね。
では、さっそく続きを見ていきましょう!
ドイツ語による説明をどう理解していくのか?
ドイツ語で説明を受けた主人公は、帰宅後パソコンで「左右野馬分髪(ズオヨウイエマフェンゾン)」や「白鶴亮翅(バイフーリャンチィ)」の漢字表現を検索して確認して理解を深めようとします。
これがアルファベットでは到底得られないとても不思議な感覚なのです。
中国語(漢字)⇒アルファベット⇒日本語(漢字)という過程が、日本語として漢字に馴染みがある私たちの感覚や認知が主人公の目や思考を通して表現されます。
中国語読みが分からなくても、漢字を目にすればイメージが湧く!これって考えるととっても不思議ですよね。
会話ではまったくコミュニケートできない中国人と日本人、ところが一たび漢字を使えば、なんとか意味が掴めるわけです。つまり、漢字は読むものではなく、見て感じるものなのですね!
翻訳家ならではの興味深い思考回路とは?
さらに、主人公の翻訳家ならではの思考回路が面白い。
漢字に限らず、ひらがな、カタカナ、アルファベット(長々としたドイツ語)が当然のように主人公の脳裏に浮かぶわけです。
例えば、漢字はかなり視覚的、直感的にイメージを膨らませます。ああ、作家や翻訳家の思考法ってこうなんだなあと思わず納得!
実は太極拳に絡めて、ロシアやヨーロッパの歴史に踏み込んでいくというのがこの小説のテーマです。
ですが、私は、こんな風に多和田葉子というマルチな作家、翻訳家の日常に触れ、その思考回路や心象風景をのぞき込んだような気がしました。
独り暮らしの「あるある」
もっと面白いのは、独り暮らしの主人公が、ドイツから日本へ帰った家族からもらい受けた家電製品と会話する場面です。
旧持ち主が関西出身だったのでしょうか、炊飯器やCDプレーヤーが関西弁でしゃべりまくります。主人公も負けじと関西弁でやり返すので、家電漫才といった様相(そんなジャンルがあればの話ですが…)。独り言とも違う、道端で出会った猫や鳥と会話するのとも違う。古くなった家電製品のご機嫌を伺いながら日々生活していると、こういう事態になるわけです。
例えば、自動販売機にコインを入れたのに、欲しいお茶が出てこないとき、あなたも自動販売機に向かって悪態をつきませんか?この主人公の場合、これが双方向の会話になってしまうのです。
でもこれって独り暮らしの私自身でもとっても「あるある」なんですね。
太極拳とのつながり
さて、太極拳の話に戻ります。
二番目の型「左右野馬分髪(ズオヨウイエマフェンゾン)」については野生の馬の鬣を分けることなど無理だとか、五番目の型となる「手揮琵琶(シオウホエピパ)」は琵琶を抱えて奏でる動作ですが、受講生らはそれぞれの育った背景により、「ああ、それはバラライカのことだわ!」と解釈したり、騒がしく意見交換が交わされます。
私自身十年近く太極拳を習った経験があるのですが(あれ?もっと長かったかなあ?)、恥ずかしながらただただボーっと習っていたことに今更ながら気づきました。
今になり、「起勢」「左右野馬分髪」「白鶴亮翅」…漢字の不思議さを含め、この小説に登場する受講生らや主人公のように、違った角度からよく考察してみようかなと考えています。
それと同時に太極拳また始めてみようかななどと思い、初めの一歩「起勢い(チーシー)」とつぶやいてみました。
商社勤務。英国へ語学留学しCambridge English Certificateを取得。帰国後外資系企業に勤務。その後結婚して夫の転勤先である米国カリフォルニア州、テキサス州、さらにアフリカのナミビアを転々とする。
それぞれの地域のカレッジにて英語、スペイン語、数学、歴史など一般教養を終了し、ナミビアでは、南アフリカ大学の通信教育にてPsychologyを専攻。
1998年に帰国し、2000年にフリーランス「医学翻訳家」として稼働開始。医学分野において創薬(製剤試験、動物試験)、治験関連文書、承認申請資料、照会事項、文献、製薬品質管理、副作用報告書等々、様々な文書の英日、日英翻訳を手掛けて今日に至る。
<趣味や日課>
昔から単純なパズルゲームが好きで、現在は3マッチパズルにはまってます。他には読書。Amazon Primeでドラマや映画を鑑賞(CMがなく、好きな時間に連続して見ることができるので、国内、海外、ジャンルを問わず興味がわいたものを観ますが、近ごろはやりの『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』など常時アドレナリンだらだら系は苦手)、音楽鑑賞。
スポーツ観戦は、相撲に加え、テニスはウィンブルドンのみ、サッカーは四年に一度のワールドカップのみ観戦。フィギュアスケートも観ます。スポーツジムでエアロやヨガのレッスンを受け、マシンに乗ったりしていたのですが、どちらかというとその後の入浴が楽しみ。現在はウォーキングに切り替えています。料理は時短で済ませますが、どういうわけか編み物が好きです。
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