【様々な翻訳】漢字の不思議

【様々な翻訳】漢字の不思議

皆さま、こんにちは!
英日翻訳家デビューコースの講師Masakoです。

「翻訳家のたまご」メルマガ&ブログ執筆は久しぶりになりますが、皆さまいかがお過ごしですか?
日々英語や翻訳作業に触れておられますか?

 

中国人SF作家?

さて、私はというと、近頃どこかで仕入れた情報を基に、現在話題の中国人SF作家劉慈欣(リウ・ツーシン/りゅう・じきん/Liu Cixin)の翻訳本にはまっております。

中国にSF作家がいるの?皆さんきっと、そうお考えでしょうね。

ええ、いたんです!

SFといえば、断然英語圏の作家が多いですよね。

私がこれまでぞくぞくわくわくして読んだSFも、みな英語圏の作家のものでした。
どういうわけか、地球にやってくる宇宙人はみな英語をしゃべり、理解します。
それに、はるかかなたの星々を目指す宇宙船の乗組員も、ロボットすらみな英語で意思疎通をしていますね。

まあ、英語が世界の共通語とされているのですから、しかたないのでしょう。

でも、これって変だよねぇ!と常々考えていました。

 

中国人SF作家による『三体』

この作家の『三体』(英語版のタイトルは “The Three-body Problem”)は、まず文化大革命の嵐が吹きすさぶ中国から話が始まります。

そして、ちょっとネタバレですが、最初に宇宙人とコンタクトをとるのが、中国の女性科学者なんです。
日本人の名前もあちこちに出てきます。

おお、アジアのSFも健在だぞ!!

ですが、どっぷりと『三体』の気分に浸るまで、やや困難な状況でした。
原因は登場人物の名前です。

 

登場人物の名前に苦戦!

そもそも、生粋の中国人である著者の名前、劉慈欣(リウ・ツーシン/りゅう・じきん/Liu Cixin)を見ていただければ分かるように、日本の常用漢字は「慈」のみで、あとはあまり使われていない漢字ですよね。
この著者の名前、カッコの中に中国語読み、日本語読み、そしてアルファベット表記の順に示しました。

登場人物の名前には中国読みのルビが入っているのですが、最初のみで、あとは名前が出てくるたびに「うっ!これなんだったかしら?」と躓いてしまい、いちいち登場人物のリストに戻って読みを確かめていました。

とてもとてもスラスラ読み進める状況ではありません。

登場人物のリストには、カッコ内に(中国語読み/日本語読み)の順で表記されています。

例えば、例の女性科学者の名前、葉文潔(イエ・ウェンジエ/よう・ぶんけつ)という具合。

最初はルビの中国語読みにこだわっていたため、まったく読みが進まない状況だったのですが、中途で頭を切り替えて、漢字はただの記号であると開き直り、素直に日本語読みにしてみました。
つまり、文潔はウェンジエではなく「ぶんけつ」、史強はシー・チアンではなく「し・きょう」です。

ああ、やっと日本語の土俵に戻って来た気分。

これでスムーズに読めました。

 

日本人が目にしている感じだからこそ起こる混乱!?

これがアルファベットであれば、最初からややこしい名前を与えられるだけで、特に迷うことはないでしょう。
あまりにややこしい名前であれば、大文字の頭だけ(例えばLiuのL)を読み、Mr.Lがどうしたこうしたとしても話がつながります。

どうも、漢字は読まなければ!という固定観念、脅迫観念があるようです。
ところが、その読み方がどうしても「葉⇒イエ」につながらない。

頭の中で混乱状態に陥るようです。

日本語の場合、ひとつの漢字でも読みがいろいろあるものもありますが、いずれも日本語読みであれば、なんとかこなせます。
けれど、本家本元の中国語読みとなるとまったくお手上げ。

いっそのこと、漢字ではなく中国読みのカタカナで表示してあれば、また違った展開になっていたことでしょう。

 

中国語→日本語翻訳の難しさ!

それにしても、中国語を日本語に翻訳される方々のご苦労が察せられますねぇ!

同じ漢字でも読み方や用法が違えば、おそらく意味の範囲も異なることでしょう。
日本文を書く場合も、ジャンルや対象読者層に合わせて、漢字とかなの割合いを考慮する必要がありますよね。
また送り仮名にも迷うことがあります。

漢字ってつくづく不思議です。

最後にもうひとつネタバレ情報!

『三体』の終盤になると日本人女性の名前「智子」が登場します。
この「智子」がその後大きな大きな役割を果たすことになるのです。

読んでみたいと思った方は、ぜひどうぞ。

その際には中国語読みの名前は、すっぱりと無視することをお勧めします。

 

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翻訳家のたまご

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ABOUTこの記事をかいた人

商社勤務。英国へ語学留学しCambridge English Certificateを取得。帰国後外資系企業に勤務。その後結婚して夫の転勤先である米国カリフォルニア州、テキサス州、さらにアフリカのナミビアを転々とする。 それぞれの地域のカレッジにて英語、スペイン語、数学、歴史など一般教養を終了し、ナミビアでは、南アフリカ大学の通信教育にてPsychologyを専攻。 1998年に帰国し、2000年にフリーランス「医学翻訳家」として稼働開始。医学分野において創薬(製剤試験、動物試験)、治験関連文書、承認申請資料、照会事項、文献、製薬品質管理、副作用報告書等々、様々な文書の英日、日英翻訳を手掛けて今日に至る。 <趣味や日課> 昔から単純なパズルゲームが好きで、現在は3マッチパズルにはまってます。他には読書。Amazon Primeでドラマや映画を鑑賞(CMがなく、好きな時間に連続して見ることができるので、国内、海外、ジャンルを問わず興味がわいたものを観ますが、近ごろはやりの『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』など常時アドレナリンだらだら系は苦手)、音楽鑑賞。 スポーツ観戦は、相撲に加え、テニスはウィンブルドンのみ、サッカーは四年に一度のワールドカップのみ観戦。フィギュアスケートも観ます。スポーツジムでエアロやヨガのレッスンを受け、マシンに乗ったりしていたのですが、どちらかというとその後の入浴が楽しみ。現在はウォーキングに切り替えています。料理は時短で済ませますが、どういうわけか編み物が好きです。