【翻訳家の暮らし】翻訳家のある「職業病」とは…?

翻訳講座のErika先生の記事。翻訳家の職業病。

みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
今回はフィンランド出身の講師エリカがお届けします。

今日は、多くの翻訳家が悩まされているであろう「職業病」についてお話したいと思います。
といっても、肩凝りの話ではありません(笑)
(そちらも重要な問題ではありますが…。)

実は、翻訳の仕事をやっていると、オフの時間に映画を見たり、本を読んでいるときにどうしても翻訳そのものが気になってしまい、作品の内容が頭に入ってこないという現象が存在します。

 

字幕が…どうしても気になる!

私が住んでいるフィンランドでは映画もテレビも吹き替えではなく、字幕が主流です。
中欧ヨーロッパなどでは吹き替えを好む国も多いと聞きますが、フィンランドでは画面の下部にフィンランド語、もしくはスウェーデン語の字幕が出て来るのが普通です。

しかし、音声が英語や日本語など理解できる言語だと脳がつい仕事モードに入ってしまい、音声と字幕の内容を比べ出してしまうのです。

面白い訳し方だったり、ましてや翻訳ミスがあると作品よりも翻訳そのものに注意が向いてしまうので、作品の内容が頭に入ってこなくなってしまうことがあります。

対策としては、字幕を見ないか、音声を敢えて聞かないかという手があるのですが、意識しないとできないので少し疲れてしまいます。

このままではせっかくの面白い作品も楽しめなくなるので、内容を楽しみたいときは仕方なく字幕をOFFにしています。

しかし、今度は面白い表現があると「この部分はどう翻訳しているのだろう?」と気になってしまうので、面白い表現が出て来る度に一度巻き戻して、字幕を再びONにしてから翻訳を確認してしまいます。

なので、映画館やテレビ放送など、巻き戻しが出来ない見方が一番楽かもしれません。

もちろん、気になるということは言語や翻訳が好きだということだと思いますし、逆に考えれば映画を見るだけで勉強の機会になるので決して悪い面ばかりではありません。

 

映画を見てモヤモヤ!

今はインターネットの普及のおかげで状況が変わりましたが、一昔前の映像翻訳者は映像ではなく、音源だけで作業をすることが多かったそうです。

しかし、実際に翻訳作業の経験がある方がわかるように、翻訳には「文脈」というものが密接に関わっています。

映像を見ないで翻訳していると、どうしても勘違いや翻訳ミスが生じてしまうことがあります。

フィンランドで有名な翻訳ミスと言えば、とあるハリウッド映画で「訓練」を意味する英語のdrillを、「ドリル(穴あけ機)」と訳していた例があります。

このようなミスは音声の言語が理解できなくても映像を見ればミスだと分かるのですが、もっと分かりづらい翻訳ミスもあります。

作品全体のニュアンスが変わってしまうレベルの翻訳ミスを見つけてしまったときは、つい一緒に映画を見ている相手にも知らせたくなるのですが、そうすれば相手まで映画に集中できなくなってしまうので、知らせるのは見終わった後にした方が良いでしょう。

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

フィンランド出身。日本語能力試験最難関のN1取得。IELTSアカデミックスコア8.5(8はExpert User、9はNative User)。日本語も日本人と見分けがつかないほど流ちょうに使いこなせるN1講師。フィンランドでは小学生のころから英語を学び始め、海外のテレビや映画は吹き替えではなく字幕が使われており、若い世代は英語が話せない人はほとんどいないと言っても過言ではない状態にあります。Erika先生も幼稚園から英語を使って育っており、英語力についても当社英語圏ネイティブ講師がまったくネイティブとそん色ないレベルと評価しています。座右の銘は「Challenge yourself!」