外国語・日本語、言葉の持つイメージの違い
こんにちは、Satokoです。
普段は翻訳の仕事をしているのですが、外国語を日本語に訳すというのは本当に難しいです。
翻訳という作業は、原文の意味やニュアンスを損なわずに表現し、かつ日本人が読んだ時に自然に読める文章にすることです。
辞書に書かれている単語をそのまま使うこともあれば、その言葉を参考にして別の言葉で表現する場合もあります。
また「この言葉じゃない」と思い、自分の中で文章のイメージを広げ、ぴったりとはまる言葉はないものか…と延々と探した挙げ句、結局日本語の辞書に書かれている言葉に落ち着くことも多々あります。
というのも、日本語に訳されている言葉が持つイメージと英語(ここでは英語とします)が持つ意味が微妙に違ったり、私達が普段イメージしている言葉の意味より英語の意味の方が広い概念であることが多いからなのです。
訳し方を決めるまで1週間はかかりました
この「Mind」という言葉もその一つです。
これは、以前私が翻訳をした本のタイトルであり、内容の核となる言葉だったのですが、訳し方を決めるまでに1週間はかかったと思います。
皆さんが「Mind」と聞いて最初に思い浮かべた日本語は何でしょうか?
おそらく「心」という言葉を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。
しかしながら、まず辞書を引いてみると…
- 〔思考・感情・記憶などをつかさどる〕心、精神
〔感情ではない〕知性、判断力 - 〔思考の〕注意、集中、専念
- 〔物事に対する〕考え方、感じ方、意見
- 〔~したいという〕意向、望み、気持ち
- 正気、正常[健全]な精神状態[考え方]
- 〔個人の〕意識、記憶、思い出
- 〔特定の人に固有の〕心理、意識、気質
- 〔優れた知性を持つ〕人、人間
*「英辞郎 on the WEB」より一部引用
というように様々な意味が書かれています。
一番最初に「心」や「精神」が書かれていることからも思いましたが、日本人は「マインド=心、精神という意味」だと知らない間にインプットされているのではないでしょうか。
でも、2行目には「知性、判断力」という言葉が出てきますよね。
これは、どちらかというと心ではなく「脳」の方をイメージするのではないかと思います。
これを、念のため英英辞典で調べて見ると…
1. The element of a person that enables them to be aware of the world and their experiences, to think, and to feel; the faculty of consciousness and thought.
例)‘a lot of thoughts ran through my mind’2. A person’s ability to think and reason; the intellect.
例)‘his keen mind’*「LEXICO」より一部抜粋
という感じです。ここでも、2番目に「intellect」が出てきました。
このように「Mind」は日本語でイメージする「心、精神」よりも広い意味があるのです。
この本はでは脳と心の関係が書かれていたため、もうどっちに訳して良いものか…。
「意識」という言葉も考えましたが、あとに「consciousness」という言葉も出てくるので区別ができないと思い、バツ。
「知性」「知力」も考えましたが、本の中での様々な場面における応用性がないため、バツ。
「魂」や「気持ち」もなんか違う…。
この時は、編集の方とも相談し、6章にわたる内容の中での様々な「Mind」を包括できるような「心」に落ち着きました。
このような言葉は意外と多く、いつも頭を悩ませています。
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高校時代に1年間イギリスへ留学し、日本人が誰一人いない町で地元の高校に通う。まったく言葉が通じない最初の3ヶ月間は辛かったが、ある日「school」の正しい発音を習得!ホストファミリーにも恵まれ、そこから楽しい留学生活を送る(思えば、ここが出発点だったかも?)。大学卒業後から1年半をイタリアで過ごし、帰国後は映画配給会社に就職。映画のシノプシスや作品の字幕翻訳に携わる。その後、デザインやアートに関する展覧会のPRマーケティング、海外教育機関とのコミュニケーションやコーディネーション業務などに従事した後、独立。現在は、出版や映像翻訳の他、通訳や英語でのインタビュアーなども務める。
『基本はアクティブ。走ること、泳ぐこと、山歩くことが好き。人混みはあまり好きではないが、いろいろな感覚が刺激を受けるので、街にも出かける。でもやはり一番のお気に入りは、さわやかな風が吹く中で歩く、自宅近くの海辺。』
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