ボンジュール!ブリュッセルからお届けします。
フルーツフルイングリッシュ講師のTakuyaです。
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不規則な複数形の代表例である「子」child/childrenは、古英語における複数形の活用語尾-ru/-enを共に用いる「二重複数」の例として知られます。
実は、約18万存在するとされる英単語の中には、二重複数を始めとする誤りや、勘違いによって生じた単語も意外と存在します。
以下で例を確認してみましょう。
勘違いによって生まれた単語①「エプロン」apron
「エプロン」apronは元々、「布」を示すフランス語の名詞nappeが語源で、中英語(11〜15世紀頃)の時代まで「naperon」と綴られました。
【フランス語:nappe → 英語:naperon】
では、語頭の「n」が落ちてしまったのはナゼでしょうか…?以下のような文章の中に、謎を解き明かす鍵が隠れています。
例)I borrowed a napron from my grandmother.
「エプロン」apronは当然、可算名詞として扱うため不定冠詞を伴うのが通例です。
時代と共にフランス語の語源に馴染みが薄くなった人々は、不定冠詞と名詞の区切り方を誤り、「apron」という単語だと解釈してしまったのです。
【英語:a napron → 英語:an apron】
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以下の例も、不定冠詞と名詞の区切り方を間違った結果、異なる綴り字の方が浸透しました。
・「あだ名」an ickname → a nickname
・「審判員」a numpire → an umpire
・「イモリ」an ewt → a newt
「オレンジ」orangeはアラビア語の名詞nāranjが語源ですが、フランス語への借用段階で既に「orenge」と綴られました。
不定冠詞と名詞の区切り方を間違うのは、必ずしも英語ネイティブに限りません。
勘違いによって生まれた単語②「金塊」ingot
「金塊」ingotは元々、「舌」を示すラテン語の名詞linguaが語源で、その形状が由来となっています。
語源と不一致な綴り字が浸透した原因はやはり冠詞で、人々は語頭の「l」をフランス語の定冠詞「l’」だと思い込み、「ingot」という単語だと解釈してしまったのです。
【フランス語:lingot → 英語:(l’ingot→)ingot】
勘違いによって生まれた単語③「豆」pea
「豆」peaは対照的に、名詞の単複が原因で誤った綴り字が浸透しました。
本来、不可算名詞として扱われた「豆」peaseを、17世紀頃の人々が名詞peaの複数形だと解釈してしまったのです。
【英語:pease/some pease → 英語:a pea/peas】
「異分析」って、一体?
今回ご紹介した例のように、冠詞と名詞の区切り方等を間違った結果、異なる綴り字や単語が生まれる現象を「異分析」と呼びます。
意外な勘違いによって新語が生まれるケースもあるのです。
いかがでしたか?
こんな単語の成り立ちって面白いですよね?
ベルギー・ブリュッセル在住。英語講師、日英仏翻訳者。趣味は料理、読書、ボルダリング。座右の銘は「You cannot find peace by avoiding life(Virginia Woolf)」。
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