ボンジュール!ブリュッセルからお届けします。
フルーツフルイングリッシュ講師のTakuyaです。
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英語学習者にとって大きな悩みの種の一つが、「混沌」とさえ言える不規則な綴り字ではないでしょうか?
私も綴り字は決して得意でなく、「必要な」necessary等はいつも辞書で調べます…(汗)
「負債」debtの「b」を始め、無音のアルファベットはとりわけ間違い易い箇所ですが、綴り字と発音がズレる例は他にも様々存在します。
無音のアルファベットを含む単語、何がある?
・「〜を疑う」doubt | daʊt |
・「領収書」receipt | risiːt |
・「島」island | aɪlənd |
・「鮭」salmon | samən |
それぞれ「b、p、s、l」は全く発音されず、綴り字と発音にズレが生じています。
元々、無音のアルファベットは存在せず?
綴り字と発音にズレが生じる原因は簡単で、何と元々、これらの単語に無音のアルファベットは存在しなかったのです。
ところが、15〜6世紀の「綴り字改革」によって、黙字(b、p、s、l)が意図的に挿入されます。
一体ナゼでしょうか?名詞debtの語源と共に調べてみましょう。
名詞debtの語源
名詞debtの語源は古フランス語の名詞detteで、13世紀頃が初出とされています。
元々無音の「b」は存在せず、英語では「det」と綴られ、ひとまず全く違和感がありません…
【フランス語:dette → 英語:det】
ところが、格式高い古典語(ギリシャ語、ラテン語)を権威と見做す16世紀イギリスの学者は、古フランス語の名詞detteの本当の語源は、ラテン語の名詞debitumだと主張します。
英語を言わば「オシャレ」で「高潔」な言語とするため、彼らはラテン語の名詞debitumを真似し、無音の「b」を意図的に挿入してしまったのです。
【英語:det → ラテン語:debitum → 英語:debt】
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以下の例も、フランス語→ラテン語→英語の順で同じ現象が起こっています。
古フランス語では存在しない無音のアルファベットが、ラテン語を倣い付け足される過程がよく分かります。
【フランス語:doute → ラテン語:dubitare → 英語:doubt】
【フランス語:receite → ラテン語:recepta → 英語:receipt】
【フランス語:ile → ラテン語:insula → 英語:island】
【フランス語:saumoun → ラテン語:salmo → 英語:salmon】
「語源的綴り字」って、一体?
名詞debtを始め、ラテン語やギリシャ語の語源に従う人為的な綴り字の改革を「語源的綴り字」と呼びます。
黙字を含む不思議な綴り字の単語と出会ったら、語源を遡ってみると謎が解けるかも知れません。
ベルギー・ブリュッセル在住。英語講師、日英仏翻訳者。趣味は料理、読書、ボルダリング。座右の銘は「You cannot find peace by avoiding life(Virginia Woolf)」。
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