講師のEriiです。
私は秋が大好きです。
そよ風を楽しみながら気持ち良く
歩いている時に「ウッ」とくる
銀杏のにおいがすると、
「ああ秋だな~」と感じます。
銀杏の香りがするとアメリカを思い出します。
英語で銀杏は”Gingko nuts”と言います。
「銀行ナッツ」という発音ではありますが、
銀行に置いてあるナッツのことではありません。
アメリカで銀杏を食べる人は正直いません。
少なくとも私は
売られているところも、
人が食べているところも、
見たことがありません。
銀杏を喜んで食べるのは
アメリカの大きなリス達ぐらいです。
ただ、銀杏の木は結構
立っていました。
私は銀杏が大好物です。
一定の数を食べると鼻血が出るとか
致死量だとか色々と話を聞きますが、
数回は死んでいても
おかしくないほど子供の頃から
銀杏を食べていました。
アメリカのスーパーでは銀杏は
売られていないため食べたくても
買うことが出来ませんでした。
秋になると
「銀杏の木がこんなにたくさんあるのに
なんで銀杏が食べられないのだろう…」
とため息をつきながら思っていました。
(今から考えると変わった子供ですね)
そんなある秋の日、
インディアナで一人の女性が立ち上がりました。
それは私の母です。
「Erii、今日は茶碗蒸しにしたいから
車に乗って。銀杏を拾いに行くわよ。」
と言われ、私は大喜びで紙袋を
持って車に乗り込みました。
「なんだお母さん、銀杏がとれるところが
あるなら早く言ってよ~」と思いながら
目的地までルンルンで外を見ながら
車に乗っていると、母がキキーッと車を
道の真ん中で止めました。
「さぁ降りるわよ」と母に言われ
周りを見ると
スーパーでもなく、
公園でもなく、
普通の住宅地に車が止められていました。
「え?お母さん、まさか。」と思いつつ、
何か言うと、母の気が変わり銀杏が
食べられなくなってしまうと思った
私は紙袋を握りしめ車から降りました。
「好きなだけ拾うのよ」と母に言われ
少し観察していると母は他人の家に植えられた
銀杏の木から道路に落ちた実を拾い始めました。
お母さんwww!?
と思いましたが、
母国から遠く離れたアメリカで
私達に茶碗蒸しを食べさせようと
恥を捨て、一生懸命道路で銀杏を拾う母が
たくましく、そして切なく思えてきた私は
覚悟を決め参戦です。
「お母さん、これはもしかしてぬす…
いやなんでもない。楽しいねお母さん。
茶碗蒸しきっとおいしいだろうね!」
今となっては本当に楽しい思い出です。
夕食の時間に父が
「銀杏じゃないか!よく銀杏なんてあったな~」
と言うと、母が「たまたま落ちていたのよ」と
言った時には吹き出しそうになりました。
「これは父にも言えない過去なのか。」
そう思いながら一人で心の中で
ゲラゲラ笑っていました。
さすがに時効かと思い、
数年前にふと思い出して、
母に「道路で銀杏をぬす….
いや、拾ったことがあったねw」
と話すと「さて、そんなことあったかしら?」
というような冷たい顔をされました。
どうやらこの出来事には時効がないようです。
私の好きな秋の思い出です。
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