英日翻訳技術を磨くのに欠かせない、日本語力
◆英語力ではできない英日翻訳
英日翻訳家、または翻訳者は、英語学習者の方にとっては憧れのお仕事のひとつといっても過言ではないでしょう。現在英語を学習されている方の中にも、「将来的には翻訳のお仕事をしたい」という目標を持っている方が少なくないかもしれません。
このように、翻訳家や翻訳者といえば英語を使う職業である、というイメージが強いので、翻訳家・翻訳者になるためにはまず英語力を高めなければ、思われる傾向があります。しかし、英日翻訳の場合、本当に英語力だけでできるものでしょうか。
実際には、英日翻訳は、優れた英語読解能力だけでなく、相当なレベルの日本語作文力が必要とされるお仕事です。英語力だけでは不十分で、英語の原文を正確かつ自然な日本語で訳すことができて、初めて良い翻訳と言えます。
◆英日翻訳で日本語力が必要なのはなぜか?
「うまい」日本語訳が求められる小説やノンフィクション書籍といった英日文芸翻訳で高い日本語力が必要なのは当然ですが、その他の翻訳ジャンル、例えばビジネス翻訳でも日本語力が重視されるのはなぜでしょうか。ここでは、マーケティング翻訳を例に見てみましょう。
マーケティング翻訳と一口に言っても、製品のカタログや企業ウェブサイト、プレスリリース、そしてプレゼンテーションなど、その種類は多岐にわたります。いずれにせよ求められるのは、ソース言語(英語)での意味を正しく理解したうえで、日本のビジネスシーンや企業の正確に合った文体での翻訳です。例えば、英語では元々カジュアルな印象で書かれていたとしても、日本語でも同じように訳して良いとは限りません。日本語のビジネス系文書はどちらかというとフォーマルな文体を好みますので、字数制限がある場合はそれも考慮しながら、「伝わる」翻訳を目指す必要があります。
社会的・文化的背景が大いに異なる英語・日本語間では、ソース言語を単純にターゲット言語(日本語)に置き換えただけでは翻訳が成立しません。原文の意味を踏まえた上で、ターゲット言語で遜色ないように訳す技術、もはや翻訳というよりはtranscreationに近い技術が要求されることがとても多いのです。
◆日本語力をつけるには?――観察とメモを重ねる
英日翻訳に必要な日本語力をつけるには、英語テキストと日本語テキストの比較がおすすめです。特にマーケティング分野においては、企業によっては多言語サイトを持っているところもあるので、英語版と日本語版を比較してみましょう。このとき、良いと思った翻訳については、英語原文と日本語原文をメモしておくのが良いと思います。
また、日記など、普段から日本語で作文をする習慣を持っておくと、英日翻訳をするときによどみのない作業ができるようになります。このとき、同じ語句や表現を繰り返していないか、修飾語と被修飾語の関係は乱れていないかなどチェックしながら書くことで、作文力はぐんと上がります。そして何より大事なのは、表現することを楽しみながら作文することです!