翻訳の現場とCATツール
翻訳のお仕事というと、Microsoft Wordを使った作業がよくイメージされているのではないでしょうか。
実際、フルーツフルイングリッシュの英日翻訳家養成コースの課題でも、訳文原稿は原則としてWord上で作成していますよね。翻訳業界でもこうしたWordによる作業は未だに多く行われていて、トライアル原稿をWordで提出することも少なくありません。しかし、同時にもうだいぶ前から、Word以外のツールを利用した翻訳業務も主流になってきています。
そのWord以外のツールとは、コンピューターによる翻訳支援ツール、あるいはCATツールと呼ばれるものです。有名どころには、SDN TradosやMemosourceなどがあり、名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これらのCATツールで特徴的なのは、原文が1文ごとのセグメントとして分けられている点です。
作業に当たる翻訳者は、そのセグメントを一つずつ順番に保存しながら訳していき、作業が完了すると「確定」ボタンを押します。言葉による説明では分かりにくいかもしれないので、気になった方は「CATツール」で画像検索してみましょう。Wordでの翻訳とは現場も流れも全く異なることがご理解いただけると思います。
CATツールでの翻訳で痛感させられるのは、翻訳の現場でも効率性が求められるようになったということです。
文が一つ一つ小分けにされているため訳し漏れの可能性がゼロなのはもちろんのこと、今までに翻訳してきた文書をデータとして残し、現在作業中の文とマッチするものがあればその訳文をコピーして使うこともできます。過去に翻訳した文と何パーセントくらい一致しているかも表示されるので、マッチ率と相談しながら訳文を作ることも可能です。
さらに、専門用語のグロッサリなどがある場合はCATツールに読み込んで、それを閲覧しながら翻訳作業を進めることもできるのです。まさに、翻訳のIT化が進んでいると感じさせられる瞬間です。
CATツールは割と高額なことが多いため導入には慎重な検討が必要ですが、今どきの翻訳会社ではCATツールの所持を必須としているところも少なくありません。勉強会やオンラインのウェビナーを開催しているメーカーも多く、積極的に参加すればほかの翻訳者との人脈づくりにも役立つでしょう。ご自身が目指す翻訳分野でCATツールが必要かどうかを見定めつつ、前向きに検討していくと良いかもしれません。