出版翻訳の仕事に就く方法(1)と「リーディング」のスキル
翻訳の仕事に就くうえで、とりわけ狭き門≠ナあるのは、出版翻訳の分野でしょう。出版翻訳とはひとことで言うと、「書籍の翻訳」で、基本的には「外国語の書籍を日本語に翻訳する」ことを指します。
なぜ狭き門≠ネのか―それはズバリ、「翻訳書の出版数は減少傾向にあるのに、書籍の翻訳志望者はきわめて多い」からだと思います。また、書籍の翻訳実績のない新人や学習者は、出版社や翻訳会社とのコネクションがないことも、ひとつの理由でしょう。書籍の翻訳を志望されている方であれば、こういった状況はよくご存知のことだと思います。
でも、翻訳学習者や新人翻訳者が、書籍の翻訳を担当できるチャンスがないわけではありません。難易度は高くなりますが、チャンスは実際にあり、そのうちのいくつかを今回ご紹介します。
まず広く知られているのは、1.「出版翻訳オーディション」というシステム。このオーディションに合格すれば、書籍の翻訳者として採用されます。
次に、2.「出版社に持ち込む」という方法があります。これは、自分が惚れこんだ原書があって翻訳を担当したいときに取る方法です。ただ、出版社にツテがない場合は、この方法はかなりハードルが高いのが事実。そこで、近年に話題になっているのが、3.「翻訳志望者と出版社の仲立ちをしてくれるシステム」です。では、順に見ていきましょう。
1.「出版翻訳オーディション」(トライアル、とも呼ばれる)
・主催者 ⇒ 翻訳エージェント(アメリア、トランネットなど)
・参加方法 ⇒ 翻訳エージェントの会員になり、そのエージェントが主催するオーディションに参加。通例、会員登録は有料だが、選抜試験はなく、誰でも登録できる。
・オーディション内容 ⇒ 当該書籍の一部を翻訳、というケースが多い。
・難易度 ⇒ 非常に高い。何段階かの選考が行われる。オーディションの件数が減っているのも影響。
2.「出版社に持ち込む」(自分が惚れこんだ原書があって翻訳を担当したいとき、その日本語版の制作を出版社に提案すること)
・方法 ⇒ 企画書(原書のシノプシス、試訳(原書の一部))と履歴書や翻訳実績書を作成し、出版社に送付する。あらかじめ出版社に連絡をとり、「持ち込み」はOKか確認することが必要。
3.「翻訳志望者と出版社の仲立ちをしてくれるシステム」
・仲立ちしてくれるシステム ⇒ アメリア「出版持込ステーション」(翻訳エージェント)
・参加方法 ⇒ アメリアの会員に登録し、このステーションに参加する。
・システム内容 ⇒ 会員が「これは!」と思う原書の企画書を作成→企画書リストに掲載→出版社がこのリストを閲覧し、企画書を検討→採用が決定した場合、翻訳/共訳/下訳を依頼される可能性あり(基本的に企画者に翻訳を依頼したいと考えているため)。
・難易度 ⇒ 高いが、売れる本≠見きわめる目や感性、企画力があれば、成功も夢ではない。
・詳細はこのサイトで⇒ https://www.amelia.ne.jp/info_column/bookstation/
(他にも類似のシステムが存在するかもしれません。見つかりましたら、またこの場でご紹介しますね)
1も2も3も、ハードルが高いのは事実です。でも、実際にこれらの方法で出版翻訳の道に進んでいる人が何人も存在するのも事実。「絶対に出版翻訳家としてデビューしたい!」とお思いの方は、積極的にこれらの方法にも挑戦しています。
また、1〜3すべてに関連するスキルがあるので、そちらもご紹介します。それは「リーディング」というスキルで、「リーディングスタッフ」という仕事もあります。「リーディング」とは、「海外書籍のシノプシス(あらすじ、評価、所感をまとめた文書)を作成し、日本の読者に受け入れられるかどうかを検討する」ことです。出版社はこの「リーディング」を参考にして、日本語版を制作するかどうかを決定します。
1の出版翻訳オーディションにおいては、不合格でも高い実力があると判断された場合に「リーディングスタッフ」として採用されることがあります。また、「リーディングスタッフ」用のトライアルもあり、それに合格すれば採用されます。さらには、「リーディングスタッフ」としてキャリアを積んで実力が認められると、翻訳者として採用されることもあるようです。
2と3においては、企画書を提出することが求められます。所定の企画書がある場合もありますが、内容は、シノプシス(あらすじ、評価、所感をまとめた文書)とほぼ同様です。
また、出版翻訳家としてデビューしたあとでも、この「リーディング」は必要なスキルです。出版社から直接、「リーディング」を依頼される場合もあれば、自分が翻訳したい原書のシノプシスを作成して出版社に提出し、出版が決定した場合は翻訳を担当する、という流れも多いからです。
今回は狭き門≠謔闖o版翻訳の道に入る方法をいくつかご紹介しました。その他にも方法はあり、それらも追ってご紹介していきます。
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